弁理士独立開業マニュアル(8)「回収できない未払金」

上記記事の続きです。

前回の記事では、

「特許事務所は、
 売掛サイトが長い」

「キャッシュフローの設計を
 入念に行うのがベター」

という内容を書きました。

売掛金や立替金が増えても、
支払期日までにきちんと入金があれば、

お金の出入りがあるだけですので、
事務所はうまく回ると思います。

ただ、
「支払期日までにきちんと入金があれば」 
が前提です。

開業間もない頃は、
大口・大手のお客様を獲得した幸運な先生を除き、

一般に、
中小企業や個人発明家からの単発業務が
メインになることが多いかと思います。

そうなると、
必ずと言って良いほど発生するのが
費用に関するトラブルです。

ディスカウント要求はもちろんのこと、

支払の遅滞や、
最悪の場合、費用の未払いも
発生します。

要因は、経営状況の悪化、倒産など、
様々です。

私の場合、

お客様に恵まれているのと、
お客様を選ばせて頂いていることもあり、

開業以来、
支払い遅滞や未払金の発生はほぼ無いのですが、

それでも未払金は0円ではありません。

聞いた話では、
未払金が数百万円単位になることもあるようですので、

そうなると死活問題です。

弁理士手数料は、
「授業料」として割り切ることもできるのですが、

立替金は、
お客様に代わって特許庁に納めている費用ですから、

未払いは看過できないと思います。

着手金として、
費用の全部あるいは一部を
事前に受け取るようにしている事務所もありますが、

お客様によって、
そのような対応をとるのが安全かもしれません。

個人的には、
費用のトラブルを避けるためには、

お客様の質を見抜く「目利き」も
重要かと思っています。

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弁理士独立開業マニュアル(7)「独立開業後に必要な運転資金」

上記記事の続きです。

特許事務所は、

「売掛サイトが長い業種」

と言われています。

例えば、

1月に特許出願を受任し、
2月初旬に特許出願を終え、

直ぐに請求書を発行したとしても、

お客様の支払サイトが
「月末締め翌月末払い」だった場合、

入金があるのは3月末。

この例では、
仕事の着手から入金までの期間が
約3ヶ月ですが、

お客様の原稿確認などの遅れ等が原因で、
それ以上の期間を要することも
珍しくありません。

経験上、お客様のご都合で、
1年以上を要した案件もありました。

入金がなく、帳簿上の売上(売掛金)だけが
膨らんでいくわけですが、

その間にも
固定費(オフィス賃料、人件費など)の支出は
定期的にありますから、

現金(運転資金)がどんどん減っていきます。

それと、

特許事務所の費用として、
意外と盲点なのが、

特許印紙代の立替です。

例えば、先の例で、

2月に、他のお客様から、
特許出願の審査請求の手続依頼が5件あったとします。

軽減申請無しなら、
特許印紙代は、ざっくり1件15万円ですので、

5件で75万円。

固定費に加えて、
75万円分の立替をしなければいけません。

しかも、

特許印紙代は、出願や審査請求など、
「お客様から手続きの御指示があったとき」
が立替のタイミングです。

審査請求のタイミングなんて、
お客様によって様々ですから、

取り扱い件数にもよりますが、
御依頼が集中したら大変なことになります。

私も、
余裕資金の乏しい開業間もない頃は、

まとまった審査請求の御依頼があるたびに、
ビクビクしていました(^^;

経験上、
1,000万円を超えたこともありました。

数ヶ月後に戻ってくるお金だと分かっていても、
心中穏やかではありません。

他にも
要注意の費用(現地代理人費用など)がありますが、

要は、
支払い時期の予測が難しい立替金を含め、

キャッシュフローの設計を入念に行っておくのがベターです、
ということです。

特許印紙代を前払いで頂戴する事務所も
あるようですが、

そこまでの信頼関係をお客様と構築するには、
時間がかかると思います。

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