弁理士独立開業マニュアル(7)「運転資金」

弁理士独立開業マニュアル(6)「初期費用」
の続きです。

特許事務所は、売掛サイトが長い業種と言われています。

例えば、1月に特許出願を受任し、
2月初旬に特許出願を終え、直ぐに請求書を発行したとしても、

お客様の支払サイトが「月末締め翌月末払い」だった場合、
入金があるのは3月末。

この例では、仕事の着手から入金までの期間が約3ヶ月ですが、
お客様の原稿確認などの遅れ等が原因で、
それ以上の期間を要することも珍しくありません。

経験上、お客様のご都合で、1年以上を要した案件もありました。

入金がなく、帳簿上の売上(売掛金)だけが膨らんでいくわけですが、
その間にも固定費(オフィス賃料、人件費など)の支出は定期的にありますから、
現金(運転資金)がどんどん減っていきます。

それと、特許事務所の費用として、
意外と盲点なのが、特許印紙代の立替です。

例えば、先の例で、2月に、他のお客様から、特許出願の審査請求の
手続依頼が5件あったとします。

軽減申請無しなら、特許印紙代は、ざっくり1件15万円ですので、
5件で75万円。固定費に加えて、75万円分の立替をしなければいけません。

しかも、特許印紙代は、出願や審査請求など、
「お客様から手続きの御指示があったとき」が立替のタイミングです。

審査請求のタイミングなんて、お客様によって様々ですから、
取り扱い件数にもよりますが、御依頼が集中したら大変なことになります。

私も、余裕資金の乏しい開業間もない頃は、
まとまった審査請求の御依頼があるたびに、ビクビクしていました(^^;

経験上、1,000万円を超えたこともありました。
数ヶ月後に戻ってくるお金だと分かっていても、心中穏やかではありません。

他にも要注意の費用(現地代理人費用など)がありますが、
要は、支払い時期の予測が難しい立替金を含め、
キャッシュフローの設計を入念に行っておくのがベターです、ということです。

特許印紙代を前払いで頂戴する事務所もあるようですが、
そこまでの信頼関係をお客様と構築するには、時間がかかると思います。

(続く)

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弁理士独立開業マニュアルまとめ

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弁理士独立開業マニュアル(6)「初期費用」

弁理士独立開業マニュアル(5)「顧客開拓」
の続きです。

独立開業時の初期費用については、
別の記事にも書かせて頂いたのですが、

独立開業を考えている弁理士先生のために、
「弁理士独立開業マニュアル」として体系的に纏めておきたいと思います。

ただ、「自宅開業」まで含めてしまうと、
「パソコンと電話の費用だけで開業できるよ」という話にもなりかねないので、
自宅開業以外の「事業用賃貸」または「居住用賃貸」に的を絞ってみます。

「初期投資を抑えること」に重点をおくなら、
なんといっても「居住用賃貸」でしょう。

「居住用賃貸」物件の保証金の相場は、
0円から賃料の2ヶ月分との事ですので、
賃料が15万円/月の場合、初期投資は最大で30万円前後で済みます。

一方、「事業用賃貸」物件の保証金の相場は、
賃料の6ヶ月から10ヶ月分との事ですので、
同じ賃料の場合、初期投資は90~150万円程度になります。

ただ、地方なら、「事業用賃貸」でも賃料の2ヶ月分ほどで済む場所もあるそうです。

ちなみに、当所の川越オフィスはバリバリの地方ですが(^^;
保証金は、賃料の6ヶ月分でした。

初期費用としては、他に
事務機器、文房具類、名刺、挨拶状、などがありますが、
金額が大きなものでいえば、内装工事費用や、オフィス家具、などでしょうか。

内装工事費用は、オフィスの広さや内容によりますが、
簡易なパーティションを設置する程度なら数十万円、
インフラ工事(電気、ネット、電話)、エントランス工事、サイン工事などを
含めると軽く数百万単位の金額になります。

オフィス家具もピンキリなので、算定が難しいですが、
安価なものや中古品を揃えれば数十万円、
高価なものを揃えると数百万円という感じでしょうか。

弁理士の情報はありませんが、
弁護士の内装予算の最多分布帯は、200万円~300万円とのことです。

ということで、平均的な初期費用としては、
「賃貸の保証金+200万円~300万円+運転資金(2~3ヶ月分の経費)」
くらいのようです。

そういえば、弁理士特有のものとして、期限管理ソフトがありますね。

安価なものもありますが、特許業界で有名なものを購入すると、
数百万円単位になります。

私もそうでしたが、独立開業が成功する保証はどこにもないので、
取り扱い件数が増えてきたら購入検討すれば足りるとは思います。

(続く)

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弁理士独立開業マニュアル(5)「顧客開拓」

弁理士独立開業マニュアル(4)「事務所の場所」
の続きです。

独立開業してみたけれど、
「殆ど仕事の依頼がないまま店じまい」
という特許事務所も少なくありません。

立派なHPを作って、事務所でじっと待っていても
仕事の依頼がくるような時代ではありませんので、
外部の方々と接する機会を如何に作るかがポイントかと思います。

オーソドックスな方法としては、
・各種交流会、各種活動への参加、
・発明相談会の相談員、
・大学・企業・公的機関などにおけるセミナー講師、
・専門家派遣
など、でしょうか。

もちろん、これらに参加・関与したからといって
仕事が舞い込むわけではありませんので、

私は、このような場を利用して
「弁理士としての専門性を発揮すること」が重要と考えています。

経験上、自分の専門性がフルに発揮できて、
人間性も気に入ってもらえれば、
お仕事の依頼は自然と増えていくと感じています。

それと、顧客開拓の方向性として、
・大口顧客を狙っていくか、
・中小企業や個人発明家の単発依頼を狙っていくか、
があるかと思います。

弁理士複数人の体制を目指すのであれば、
「大口顧客+定期的な単発依頼」が理想ですが、

一人事務所でよければ、
「定期的な単発依頼」で十分かと思います。

「定期的な」が難しいのですが・・・
良い方法がありましたらご教授ください(^^;

(続く)

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弁理士独立開業マニュアル(4)「事務所の場所」

弁理士独立開業マニュアル(3)「独立開業に必要な資質」
の続きです。

「事務所の場所」は、新設オフィス(川越オフィス)の開設準備をしている
私にとって「旬」なテーマなので、備忘録を兼ねて少し書いて見ます。

以前に当ブログでご紹介したことがある弁護士用の独立マニュアルによれば、
以下の5つの視点があるそうです。

(1)裁判所への交通の便
(2)郵便局本局
(3)依頼人の便
(4)分譲か賃貸か
(5)事業用か居住用か

まず、(1)ですが、
弁理士の場合、「裁判所への交通の便」を考えるよりは、
「特許庁への交通の便」を考えたほうが良さそうです。

ただ、特許庁との書類のやりとりのほとんどは
インターネットでできますので、優先順位は低いと思います。

私の場合、
既存オフィス(大宮オフィス)や新設オフィス(川越オフィス)から特許庁までは
電車で1時間ほどかかりますが、それほど頻繁に行くことがありませんので、
特に不便を感じたことはありません。

(2)の「郵便局本局」も(1)と同じ理由で、優先順位は低いと思います。
纏まった郵便物があれば集荷に来てくれますし、
内容証明郵便などもインターネットでできますしね。

(3)の「依頼人の便」は、駅近が何かと便利かもしれませんが、
既に取引のあるお客様がいる場合には、駅近に拘ること無く、
お客様の近くに事務所を設置しても良い気がします。

薬局を病院近くに設置するような感じで。

私の場合、
新設オフィス(川越オフィス)については
1年ほど前から狙っていた場所があるのですが、
空き物件が出る可能性が低いことが分かったため、
駅近(最寄駅から徒歩2分)で妥協しました。

既設オフィス(大宮オフィス)は、埼玉県最大で利便性の良い駅(大宮駅)
の近くということで満足しています。

(4)の「分譲か賃貸か」ですが、
(5)の「事業用か居住用か」とも関係しますね。

掛け算で、
(a)居住用賃貸、(b)居住用分譲、(c)事業用分譲、(d)事業用賃貸
が考えられますが、
多いのは、(d)事業用賃貸で、次が(a)居住用賃貸でしょうか。

(b)居住用分譲は、自宅で開業するケースだと思いますが、
ランニング費用が抑えられるくらいのメリットしか思い浮かびません。
デメリットの方が多い気がします。

(c)事業用分譲は、ビルのオーナーか、区分所有等だと思いますが、
レアケースですね。うらやましいですがw

私の場合、理想は(c)で、現実は(d)です(^^;

(続く)

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弁理士独立開業マニュアル(3)「独立開業に必要な資質」

弁理士独立開業マニュアル(2)「独立開業に必要な資質」
の続きです。

>私は、最大の難関は、幅広い人脈(4)と情報処理能力(5)
>ではないかと考えています。

中小企業庁の資料によれば、「情報処理能力」とは、
「事業に関する生きた情報を集め、それを活用できること」
と定義されています。

「事業に関する生きた情報」
いろいろな捉え方ができるので、難しいですね・・・

弁理士にとって、法改正や審査基準改定に関する情報等は
生きた情報と言えそうですが、

これらの情報収集を行うのは、独立開業とは関係なく、
弁理士として当たり前のことかと思います。

ただ、中小企業や個人に対する施策(例えば、料金の減免等)に関しては、
無関心な弁理士と、きちんと勉強している弁理士に、はっきり分かれますね。

今だと「料金の1/3軽減」が生きた情報の一つですね。

お客様から「軽減の対象になりますか?」と聞かれ、
瞬時に、要件を満たすかどうかの判断ができる弁理士は、そうは多くないと思います。

そういう意味では、生きた情報を、
活用できる弁理士と、活用できない弁理士が存在します。

大手企業だけをお客様にしている弁理士(特許事務所)なら、
そもそも不要な知識なのかもしれませんが。

正直な話、中小企業や個人に対する施策は、
費用対効果を考えると、割に合わない手続が多いです。

ですので、無関心、というか、
積極的にフォローをしたがらない気持ちは少し分かるのですが、

経験上、武器になることもあるので、
勉強(経験)しておいても損は無いかと思っています。

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